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津地方裁判所 昭和53年(行ウ)4号 判決

原告 善光寺

被告 四日市都市計画復興土地区画整理事業施行者 三重県知事

参加人 安楽寺

主文

一  被告が被告参加人に対し、昭和五一年五月一五日付四復発第一二〇号をもつてなした、三重県四日市市泊村字南奥四一五四番地墓地一二二三平方メートルの換地処分が無効であることを確認する。

二  被告が原告に対し、昭和五一年五月一五日付四復発第一二〇号をもつてなした、三重県四日市市泊村字南奥四一五五番地墓地一六三五平方メートルの換地処分が無効であることを確認する。

三  訴訟費用中、原告と被告との間に生じた費用は被告の負担、参加に関して生じた費用は参加人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告及び参加人)

(本案前)

1 本件訴えをいずれも却下する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(本案)

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告及び参加人は昭和二六年ころ、それぞれ三重県四日市市内に墓地を所有し、原告は墓碑等一八一基を、参加人は同じく三八基を所有管理していた。ちなみに原告は浄土宗に属し、参加人は日蓮宗に属する。

2  ところで、被告は戦災復興事業として昭和二六年六月一三日付戦災復興院告示第四二号内閣総理大臣決定、同年九月一〇日同大臣施行命令により、区画整理を実施して四日市市内の各墓地を、同市泊村字南奥(以下、字南奥という。なお、この地は、もと国有地であり、旧海軍施設が設けられていたが、戦後大蔵省が管理していたところ、被告は右区画整理を実施するため、同省から無償で借受けた。)に墓園(以下、泊山霊園という。)を造成してこれに移転させることとした。

3  そして、右移転に先立つて関係寺院はその各代表役員をもつて墓地整理委員会を結成し、その事務所を参加人方に置いて各寺院の既存の墓碑基数から新墓園への移転基数、移転位置及び区画等を協議し、これに基づいて被告は各寺院に対し、昭和二四年から同三二年までの間に逐次現地割当を行ない、原告に対して二三六二平方メートル、参加人に対して四九六平方メートルの各現地割当をなした。

そして、被告は右割当以来、各寺院の占有管理を認めたから、原告及び参加人らはそれぞれ墓碑移転をなし、以来これを占有管理してきた。

4  その後、被告は、昭和五一年五月一五日付四復発第一二〇号をもつて、原告に対し字南奥四一五五番地墓地一六三五平方メートルを、参加人に対し字南奥四一五四番地墓地一二二三平方メートルを、土地区画整理法九五条の規定による特別の宅地に関する措置としていわゆる創設換地処分(同五二年一月二一日公告、以下、両者を合せて本件換地処分という。)した。

5  ところで、被告は原告及び参加人に対し、前記のごとく現地割当をなしていたから、その現地割当分である二三六二平方メートル及び四九六平方メートルをそれぞれ換地処分すべきであつたところ、誤つて本来原告に換地処分すべきであつた右二三六二平方メートルの一部である七二七平方メートル(以下、本件係争地という。)を参加人に対して換地処分してしまつたのである。

これは、被告が、原告に対して現地割当をなした墓地の一部である本件係争地が参加人に対して現地割当をなした部分と墓地一区画の中に隣接して存在していた(その位置関係は別紙図面(一)のとおり)ために、誤つて本件換地処分をなしたものであり、これが誤りであることは本件換地処分に先行する現地割当の経緯に照らして明白である。

6  以上のとおり、本件換地処分は、特別の事情がないにもかかわらず、被告の過誤により、既に現地割当をうけ占有管理していた墓地の地積に比し原告に対しては七二七平方メートル減少し、参加人に対しては七二七平方メートル増加したものであつて、これは本件土地区画整理の趣旨に反し、しかも、現地割当以来、被告が本来意図していた換地処分の目的に照らすと合理性ないし合目的性を欠くことは明らかであるから無効である。

よつて、原告は被告に対し、本件換地処分の無効確認を求める。

二  請求原因に対する認否

(被告)

請求原因1ないし5はいずれも認める。

(参加人)

1 同1のうち、原告及び参加人が昭和二六年ころ、それぞれ四日市市内に墓地を所有し、墓碑等を所有管理していたこと及び所属宗派の点は認める。

2 同2は認める。

3 同3のうち、関係寺院の代表役員をもつて墓地整理委員会が結成され、その会合が当初、参加人方で開催されたこと、原告及び参加人が、それぞれ被告から指定された字南奥の墓園に墓碑移転をなし、以来これを占有管理してきたが、原告及び参加人は墓地の同一区画のうち、それぞれ七二七平方メートル及び四九六平方メートルに墓碑移転をなしたことはいずれも認め、その余の事実は不知。

4 同4は認める。

5 同5は否認(但し、係争地の位置関係が別紙図面(一)のとおりであることは認める。)し、同6は争う。

三  被告の主張

1  本件換地処分がなされるに至つた経緯について

(一) 本件換地処分がなされるに至つた経緯は請求原因2ないし4記載のとおりである。

(二) 被告は、各寺院の墓碑について当該寺院住職立会のうえ有縁、無縁を区別して調査し、新墓地に移転する基数を定め、墓碑一基につき土地七・八平方メートルの割合で面積を計算し、それに従前の各寺院の墓地の形態及び移転墓地の土地の形状等を勘案しながら割当面積を決めたから、各寺院によつて割当面積の算出計算は異り、これは一定ではない。そして、墓碑についても、これをできる限り「先祖代々之墓」に合祀するよう指導して整理したため、移転基数と新墓地への収容基数に相違が生じたのである。

そして、割当場所については、昭和二三年に四日市市の戦災寺院住職、檀家総代及び学識経験者から選出された一〇名の委員で組織された墓地整理委員会が前記割当面積を基準に、現地の地形等を勘案して事業施行者である被告に答申し、被告はこれに基づいて割当場所の指定をした。

(三) ところで、被告は、右(二)の方法によると原告の移転墓碑が一八一基、割当面積が一四一一・八平方メートル、換地処分すべき面積が二三六二平方メートルとすべきところ、これを誤り、原告に対し一六三五平方メートルを換地処分してしまつたのであり、結局、原告は七二七平方メートル不足したことになる。これに対して、被告は、参加人の移転墓碑が三八基、割当面積が二九六・四平方メートル、換地処分すべき面積が四九六平方メートルのところ、これを誤り、参加人に対し一二二三平方メートルを換地処分してしまい、結局、原告に換地処分すべき右七二七平方メートルを増加して換地処分してしまつたのである。

このように、被告は原告が被告から割当てを受けて墓碑を移転し、既に墓石五〇基余を建立してしまつていた部分について、これを誤つて参加人に換地処分したのであり、本来、右部分は参加人に換地処分されなければ原告に換地処分されたのである。

(四) なお、被告が各寺院に対してなした字南奥の換地処分は、右のとおり原告及び参加人に対する換地処分の誤りのほかはすべて適正にされたのである。

(五) したがつて、被告は、本件換地処分については、原告に対し二三六二平方メートルを、参加人に対し四九六平方メートルをそれぞれ更正して換地すべきであるから、参加人との関係では無効部分は右四九六平方メートルをこえる地積七二七平方メートルの部分に限定されるというべきである。

2  本案前の抗弁

(一) 本訴において原告が終局的に求めるところは、参加人に換地処分されてしまつた本件係争地について、これを原告の所有にすることであり、その前提として本件換地処分の無効確認を求めるということに帰するから、このような場合は、現在の法律関係に関する訴えとして参加人を相手として本件係争地の所有権確認及び土地引渡を求める争点訴訟によりその目的を達しうるのであるから無効確認の訴えの原告適格を欠くというべきである。

(二) また、仮に原告の本件請求が認容され、これが確定しても、被告は右判決の趣旨を実現するには、本件都市計画事業の実施手続を新規にやり直さなければならないが、右事業は既に法律上も実務上も完了しているから、今更新規にやり直すことは法律的に不可能である。

したがつて、本件訴訟は、原告が勝訴してもその訴訟により達成しようとする目的が事実上達成されないことが明らかに予見されるから、損害賠償請求を求めるならば格別、そうでない以上、行訴法三六条の趣旨に照らして確認の利益がなく不適法というべきである。

四  参加人の主張

1  本案前の抗弁

被告の主張2・(二)と同じ。

2  本案について

(一) 被告は、本件係争地について、本来参加人に対し換地すべきであるから、現地割当もそのようになすべきところ、誤つて、原告に現地割当してしまつたにすぎないのである。したがつて、本件換地処分には何ら違法は存在しない。

(二) たとえ、本件換地処分に瑕疵があつたとしても、その瑕疵は、重大かつ明白とはいえない。

五  被告の本案前の抗弁(2・(一))に対する原告の反論

原告は本件係争地につき換地処分をうけておらず、同地につき所有権を主張しうべき立場にない。したがつて争点訴訟によることはできない。

第三証拠〈省略〉

理由

一  本案前の抗弁について

1  被告及び参加人は、原告の本件訴えはたとえ勝訴しても、被告は右勝訴判決の趣旨に従つて原告の求める訴訟目的を実現することが法律上及び事実上不可能であるから、訴えの利益を欠き許されないと主張している。しかしながら、換地処分が土地区画整理地区全域にわたつて当該整理目的に基づいて総合的換地計画を策定したうえ、これに基づいて行なわれたとしても、利害関係人が個々の具体的換地処分について、その瑕疵を理由として無効確認を求めえないとすべき法律上の根拠はなく、もとより、土地区画整理事業及びこれに基づく換地処分について、その無効確認の判決が確定した場合、その判決内容を実現できないとする法律上の根拠も見出しえない。

したがつて、この点に関する被告及び参加人の主張は採用の限りではない。

2  次に行訴法四五条の争点訴訟によるべきとの主張について検討するに、原告は、本件係争地については、本件換地処分の性質上、被告から換地処分を受けない限り所有権その他私法上の権利を取得するものではなく、それゆえ、原告は参加人に対して、本件係争地について何ら私法上の請求をなしえないものであるから、原告が本件係争地について権利を取得するためには行訴法上の訴えによらざるをえず、原告は本件訴えについて適格があるというべきである。

よつて、被告のこの点についての主張も採用の限りではない。

なお、原告は、被告の原告に対する換地処分の無効確認のみならず参加人に対する換地処分の無効確認をも求めているから、この訴えの利益について付言する。

後記のとおり、被告はその事業目的に即し、原告に対して本件係争地を換地処分する意図で、いわばその準備段階として泊山霊園において現地割当をなし原告においてこれを占有管理していたところ、誤つて、本件係争地を参加人に換地処分してしまつたのであり、しかも、本件係争地は原告及び参加人だけがそれぞれ占有管理している造成区画にあつて事業目的からして換地計画上からも、また地形上からも他の第三者に換地処分される見込みがないものというべきであるから、本件係争地は参加人に換地処分されなければ原告に換地処分されるべきものであつて、原告及び参加人に対する本件換地処分の誤りは、それぞれ本件係争地について表裏の関係にあるものということができる。

そこで、このような場合に、右紛争を合理的、実質的に解決するためには、原告は、原告に対する換地処分の瑕疵についてその是正を訴求しうるのみならず、端的に参加人に対する換地処分の瑕疵についてもその是正を訴求しうるものと解するのが相当である(しかも、右各請求は右瑕疵の是正を求める点で同一の目的を有するというべきであるから、原告はこれらをそれぞれ別訴として提起しうるのみならず、もとよりこれを併合して同一の機会に訴求しうるものというべきである。昭和四〇年(行ツ)第七三号同四三年一二月二四日最高裁第三小法廷判決・最高裁判所判例集二二巻一三号三二五四頁参照)。

二  請求原因2及び4並びに原告及び参加人が昭和二六年ころ、それぞれ四日市市内に墓地を所有し、墓碑等を所有管理していたが、字南奥の墓園の同一区画のうち、七二七平方メートル及び四九六平方メートルにそれぞれ墓碑移転をなしその位置関係は別紙図面(一)のとおりであること、また関係寺院の代表役員をもつて墓地整理委員会が結成され、その会合が当初参加人方で開催されたこと、原告が浄土宗に属し参加人が日蓮宗に属していることはいずれも当事者間に争いがない。

三  右当事者間に争いのない事実に、成立について争いのない乙第二号証の一、二、第三号証の一ないし一九、第四、五号証の各一ないし三、第六号証の一ないし五、第七号証、丙第一ないし第四号証(なお、乙第二号証の一、二、第三号証の一ないし一九、第四、五号証の各一ないし三、丙第一ないし第四号証については原本の存在成立共争いがない。)、証人西川正典、同成田勝彦、同藤牧勇宣の各証言、原告代表者本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることができ(ただし、証人藤牧勇宣の証言中、左記認定に反する部分は措信しがたく採用しない。)、他にこれを左右するに足りる証拠はない。

1  原告及び参加人は昭和二六年ころ、それぞれ四日市市内に墓地を所有し、原告は三〇〇坪の敷地に一八一基を、参加人は八九坪の敷地に三七基をそれぞれ所有管理していた。

2  ところで、被告は、四日市市の戦災復興事業を行なうこととし、昭和二六年六月一三日付戦災復興院告示第四二号内閣総理大臣決定、同年九月一〇日同大臣施行命令により、区画整理を実施して四日市市内の各墓地を、旧海軍施設が設けられていた国有地に造成した泊山霊園に移転させることとした。

3  そのため、被告は、右移転に先立つて関係する各寺院の代表役員、檀家総代及び檀家総代中の学識経験者らによつて墓地整理委員会を作らせ、右各寺院の既存の墓碑基数に一定の割合(既存の有縁墓碑基数の三割増とし、その割当面積は間口二メートル、奥行三メートルを標準とした。)で計算した割当面積を示したうえ、右委員会に泊山霊園への移転基数、移転位置及び区画等の現地配分を諮問し、これに基づいて右委員会は墓地の割当を行なつた。

そして被告は墓地委員会の割当に基づいて、現地の配置図を作成し、各寺院に対し昭和二四年から同三二年までの間に、泊山霊園における墓地の割当をなした。なお、原告に対する割当は二三六二平方メートルであり、参加人に対する割当は四九六平方メートルであつたが、原告に対する右割当のうち本件係争地七二七平方メートルと参加人に対する四九六平方メートルとは同一造成区画(現在、字南奥四一五四番地)内にあり(その位置関係は別紙図面(二)のとおり)、通路部分によつてほぼ東西に分けられ、この配置の状況は、被告が作成して管理している現地の平面図等にも明示されていた。

4  そして原告及び参加人らの関係寺院は、被告の右割当後、泊山霊園に行つて現地を確認のうえ、墓碑等の移転を行ない、以来、これをそれぞれ占有管理してきた。

なお、原告は浄土宗であるが、仏教普及の意図のもとに依頼を受ければ他宗の信者であつても原告管理地に墓地を建立させていた。そのため、本件係争地を含む原告管理地内には他宗の墓もいくらか混在している。

また、参加人は日蓮宗であるため、参加人に割当てられた区域には専ら同宗の墓が建立されている。

5  しかるに、被告は換地計画に関する所定の縦覧手続等を経たうえ、原告に対し、昭和五一年五月二五日付で前記割当地のうち、本件係争地を除いた、字南奥四一五五番地墓地一六三五平方メートルを、参加人に対し、同日付で前記割当地に本件係争地を加えた、字南奥四一五四番地墓地一二二三平方メートルを、それぞれ土地区画整理法九五条による特別の宅地に関する措置としてのいわゆる創設換地処分の通知をなし、同五二年一月二一日その旨の公告をした。

6  これに対し、参加人は本件換地処分の内容を知つた、昭和五一年六月三日ころ、被告の担当係員に、本件換地処分の換地面積に誤りがないかを確認した。そこで、右係員は、本件換地処分について、換地明細書台帳、清算金明細書台帳、確定測量図、配置図等の関係書類を検討したところ、いずれも本件換地処分と内容が一致していたため、参加人に対し誤りでない旨の回答をなした。

なお、原告は、本件換地処分について、前記現地割当と合致しているものと考え、建設大臣に対する審査請求等はしなかつた。

7  また、泊山霊園においては、原告及び参加人に対する本件換地処分のほか、前記現地割当とその後になされた換地処分との間に面積及び位置関係に不一致が生じた例はなかつた。

四  以上によれば、被告は、本件係争地を原告に対して換地処分すべき意図で現地割当し、その旨の現地平面図等を作成していたところ、本件換地処分に至る間に、右平面図等の図面上に明記されていた原告割当地と参加人割当地との境界線を、本件換地処分をなすにあたり作成すべき換地図(土地区画整理法施行規則一二条)を作成するにあたつて脱漏してしまい、更にこれに基づいて関係書類が作成され、本件係争地を含む字南奥四一五四番地全体を参加人に対して換地処分してしまつたものと推認される。

五  ところで、前記三、四によれば、本件換地処分は、前記のとおり、被告において事務担当者の過誤により当初意図していたのとは異る内容をもつてなされたものであり、その結果、原告及び参加人はそれぞれ現地割当により移転し終えた従前の既存墓碑に対応しない換地処分を受けるに至つたものであるが、本件換地処分は、土地区画整理法九五条のいわゆる創設換地であるから、同法八九条にいう換地処分における照応の原則及び平等の原則は直ちに適用されるものではないとはいえ、市街地からの既存墓碑の寺院単位の移転集約という目的に照らし右照応の原則及び平等の原則はその趣旨とするところが尊重されなければならないというべきである。

また、一般に行政手続は、その目的とするところに従つて合理的になされなければならないところ、これに反した行政手続がなされ、しかも、それによつて被処分者が不利益を被つたような場合には、当該行政の安定とその円滑な運営の要請並びに右被処分者の不利益とを考慮したうえ、右被処分者に右処分による不利益を甘受させるのが著しく不当であると認められるならば、右行政手続は合理性の逸脱が著しいものとして無効となるものというべきである。

そこで、本件換地処分がなされた経緯をみると、前記墓地整理委員会をはじめ現地割当に至る手続からすると、被告が当初意図したところの手続(前記三・3のとおり)は、照応の原則の趣旨に則り、換地計画として合理的であつたというべきであるから、被告は右現地割当に対応した換地処分をなすべきであつたというべきであり、本件換地処分はこの点、明らかに重大な瑕疵があつて、本件換地処分は合理性を欠くものというべきである。

そして、原告は、前記のとおり、現地割当がなされると墓碑の移転をなし、更に、その後、本件係争地を含め新規に檀徒及びその他の者に墓地を提供し、これを管理してきたのであるから、本件換地処分について不服申立期間が徒過したことを理由に既に争えなくなつたとして、本件係争地を参加人の所有するところであるとすることは、著しく不利益であるばかりか、これを放置することは不当であり、違法であるというべきである。

このように、被告が原告及び参加人に対してなした本件換地処分は合理性、合目的性を欠き重大かつ明白な瑕疵があるというべきであるから、本件換地処分は無効(なお事柄の性質からみて、被告のいう限定的無効の主張は採用できない。)といわざるをえない。

六  以上によれば、被告の原告及び参加人に対する本件換地処分はいずれも無効であるというべきであつて、原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 上野精 大津卓也 秋武憲一)

別紙図面(一)〈省略〉

太線で包む部分が係争地

縮尺 1/500

別紙図面(二)〈省略〉

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